イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第4章 皆との距離
彼女の姿が見えなくなると、アレクは布巾をカウンターに投げ、手を止めた。
(あいつは……何を、隠しているんだ。)
目を上げれば、薄暗い店内がやけに冷たく見えた。
彼女の瞳のように。
どこか彼女に拒絶されているような気がしていた。
普通に接してくるし、自分や客に優しい様子も見せるのに、彼女が心は開いていないことを―――何が彼女をそうさせているかまではわからないものの―――アレクは薄々気づいていた。
だからこそ、名前を呼ばれて驚いたのかもしれない。
「………。」
複雑な気持ちを抱え、アレクは店の鍵を閉めにかかった。