イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第4章 皆との距離
あてがわれた部屋の戸を閉めると、テリザはドレッサーの前に座り、腕の上に顔を木の面に伏せた。
(ラッド様…すごく、優しくて、あったかい…。なんだか…)
――なんだか、あの人みたい。
よからぬことが頭に思い浮かび、テリザはドキッと鼓動が跳ねた。
(っ…なんてこと考えてるんだろ…。)
彼は、自分が代償を払い終えるまでの、仮の兄。それだけなのに。
妙な胸のざわめきを落ちつけようと、長く息を吐き出し、鏡を見た。
まだあどけない瞳の奥には、何かが陰っていた。
(……お願いです。全部私が背負って生きます。ですから、どうかあの人を幸せに。…あの人の心を、少しでも楽にしてください。)
十字を切り、短く祈った、その時。
どくん、と心臓が嫌な音を立てた。