イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第4章 皆との距離
「あ…ハルさん…。」
テリザはだるさを押し込め、身を起こした。
「すみません…大丈夫です。」
「何が『大丈夫です』だ。何があったんだ。」
詰め寄るハルに、テリザは微笑んでゆるく首を振った。
「本当に、大丈夫なんです。いつもの発作ですから。」
彼女がそう言うと、ハルは少しだけ腕の力を緩めた。
「ああ……募集の時に、聞いたが…鎮静剤を処方しようか?」
少し迷ったのち、テリザは首を振った。
「ありがとうございます…でも、慣れてますから。」
テリザはそう言ってから、不安げに顔を上げた。
「だけど、もしご迷惑でなかったら…決行の日には、お願いできるでしょうか?」
人前で発作が起きたとき、何でもないふりをすることはできる。だけどとてつもなく苦しい上に、万が一切羽詰まった状況に陥れば、ひとたまりもない。
「ああ、わかった。だが決して無理はするな、」
ハルはテリザの背中をそっと撫でて座らせた。
「本当に大丈夫なんだな?」
「はい、もう大丈夫です。」
もう一度だけ心配そうに尋ねたハルに、テリザは微笑みかけた。