イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第4章 皆との距離
「……。」
ハルはテリザを鏡越しに心配そうに見ながら、櫛を手に取り彼女の髪を梳いた。
「ハルさんは…私がここにいることに、反対なのでしょうか。」
話題を変えるようにさりげなく訊くと、鏡の中で目が合った。
「それは違うな。」
「…?」
「ラッド様は、君を本当の妹のように大切にしようと思っているから…私としても、君には、危険な目にあってほしくない。」
(そう…思っていてくださったんだ)
「ありがとうございます…。」
「思ったままに言っただけだ。」
淡々と答えるハルだが、髪を撫でる手つきは優しい。
「ラッド様にとって、というだけでなく…私自身から見ても…」
ハルは一旦そこで言葉を切り、テリザの髪を下した。
「君は、魅力的な女性だ。そんな人を、危ない目にさらしたくない。」
真顔でそんなことを言われ、テリザは照れて目を伏せた。
「そんな…。言いすぎです、ハルさん。」
「いいや、君はここに来て間もないとはいえ、本当にラッド様に大事に思われている。」
(あ…そこだと思われたんだ)
心の中でくすっと笑って、テリザは顔を上げた。