イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第4章 皆との距離
「そういえば、ハルさんってラッド様の弟様なんですか?」
リビングルームで聞いてから引っかかっていたことを尋ねると、彼は考え込むように目を伏せた。
「私は…幼少期に、ラッド様の祖父のマーカス様に、貧民街で拾われた身だ。」
「え?」
全く予想していなかった言葉に、テリザは目を瞬かせた。
「ラッド様は私を弟のようにかわいがってくれたが、彼に恩がある私は、ラッド様に執事として仕えることにしたんだ。」
「そうだったんですね…。」
ハルはドレッサーの上の物を片づける手を止め、真っ直ぐテリザを見た。
「テリザ。」
「……?」
「鉄道会社の者はラッド様にとって家族のようだが…君も、大切な家族だ。それを忘れないで欲しい。」
ハルの真摯な瞳に、テリザはこくりと喉を鳴らした。
「……はい……ありがとうございます。」
戸惑いの残る答え方に、彼は気づいていただろうか。