イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第4章 皆との距離
「ぁ…っ…」
微かに身じろぎしたテリザを身体から離し、ラッドは彼女の顔を覗き込んだ。
「大丈夫か?」
「は、はい…」
(どうして…ラッド様は、男性の方なのに…)
――全然、嫌じゃなかった。
動揺するテリザの肩に手を置いたまま、ラッドは目を上げた。
「おーい、ネモ、挨拶しなさい。」
微かな羽音と共に、ラッドの腕に真っ白なフクロウが止まった。
「わぁ…!」
純白の羽を膨らませ、ラッドの腕で誇らしげにとまっているその美しい鳥を見て、思わずテリザの口から感嘆の声が漏れた。
「ホー。」
低い鳴き声がしたくちばしのそばを、テリザは指先でそっとなでた。
「ネモ…っていうの?よろしくね。」
ネモのふわふわとした羽毛からじわりと体温が伝わる。
「ごめんなさい、驚いたりしてしまって。ネモは、ラッド様の…?」
「ああ、ネモはうちの家族だ。普段は庭を自由に飛び回ってるけどな。」
「そうなんですね…。」
(可愛い…。)
子供の頃から、動物は大好きだった。丸い目でじっと見てくるネモの羽をなでていると、ラッドが自分を見ていることに気付き、テリザはハッと手を離した。
「あ、すみません…つい。」
「いや、いいんだ。テリザはうちの子なんだから、仲良くなってくれて嬉しい。」
その言葉に、テリザは戸惑って睫を揺らした。