イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第4章 皆との距離
「…テリザ?」
ラッドにそっと呼びかけられると、テリザはすぐに微笑んだ。
「…ありがとう、ございます。私なんかにそのような言葉をかけてくださるなんて…」
彼女がそう言うと、ラッドはふいに眉間にしわを寄せた。
「――その言い方は、よくないな。」
「…?」
困惑しているうちにするりと片手を絡め取られ、左手の甲にキスをされた。
バサリと羽音がして、ネモが飛び立ったのがわかる。
「っ…」
「君『なんか』じゃない。君はちゃんと、素敵なレディだ。うちにいてくれて光栄に思ってる。」
「そんな…。」
ラッドは、恥ずかしがってうつむくテリザの顎を指先でつかんで引き寄せ、くっと上を向かせた。
(……!)
「自信を持って、前を見つめていれば…どんな男でも、君の虜になるだろうな。」
「えっ……」
いたずらっぽい笑みで告げられ、テリザはボッと赤くなった。
しかしラッドはあっさり手を離すと、テリザの頭の上にポンと手を置いた。
「テリザ、明日のブルーベルの昼休みの時間を俺にくれないか?」
「え?は、はい。」
テリザが慌てて答えると、ラッドは微笑した。
「その時間は兄ちゃんとデートだ。」