イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第4章 皆との距離
入口のベルが軽やかな音で鳴り、テリザは新しい客に顔を向けた。
「リュカ…!いらっしゃいませ。」
「おはよう、テリザちゃん。」
変わらず眩しい笑顔と共に、リュカは片手を軽く上げた。
「あれからどう?クロムウェル邸での生活。」
席に腰かけてリュカは訊いた。
「うん、おかげさまで…」
テリザが言いかけたとき、再びドアが勢いよく開いた。
「リュカ~!もう、どうして先に行っちゃうの?」
「探したわ。」
「ブランチなら、ご一緒にしてもよろしいかしら?」
黄色い声が店内に響き、五、六人の女性たちがリュカのテーブルを取り囲んだ。アレクが呆れたような視線を投げかけ、肩をすくませたところから見ると、これはいつもの光景のようだ。
「えっと…」
目を泳がせるリュカを見て、テリザもどうしたものかと立ち尽くしているうちに、女性たちは勝手にリュカの周りに座った。
「あの…注文、取りましょうか。」
とりあえずリュカに声をかけた。
「えっとじゃあ…スモークサーモンサンドとアッサムティー、お願い。」
「私も同じのー。」
「私はパンケーキと…」
矢継ぎ早に飛んでくる注文をどうにか書きとめ、そそくさとカウンターに戻った。
(やっぱりリュカって…すっごくモテるんだな…。)
あれだけ整った顔立ちをしていれば、当然といえば当然かもしれないが。
(あの人も、そうだったっけ。)
なんとなく思い出したが、前ほどは胸は痛まなかった。忙しいと、気もまぎれるのかもしれない。