イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第4章 皆との距離
ブルーベルを出ていくと、ラッドの導くままに町を歩いていく。
(ラッド様…?)
何も言わないラッドの顔を見上げたが、表情は読めない。
(何かに…怒ってる…の?)
「あの…」
「強引に連れ出してすまなかったな。あんな風にアレクとの間に割って入るなんて、大人げなかったな。」
「いえ…私は、全然…」
話し下手が災いして、何を言えばいいかわからずテリザはそれ以上気の利いたことも言えなかった。
だけどラッドはテリザに微笑みかけた。
「お詫びに、デートにはとっておきの店に招待しよう。」
そう言ったラッドにエスコートされ、着いたのは、女の子に人気というかわいらしいカフェだった。
「わあ…!」
テリザは感嘆の声を上げた。ブルーベルのシックな雰囲気が大好きなのだが、この店のようにかわいい見た目も、たまらない。
(テーブルクロスの柄とかも女の子向けだな…)
ラッドが連れてきてくれると予想もできなかった場所だったが、たくさん考えてくれた気がして、嬉しかった。
「お気に召したようで何よりだ。」
ラッドと一緒に窓際の席に着いた。
「はい…すごく素敵なところですね。」
「テリザの好きなものを注文しなさい。」
「ありがとうございます…」
甘やかされている感じに照れながらメニューを覗き込んだ。
(甘いものいっぱいあるな…。)
テリザは、妹にいさめられるほどに、甘いものには目がない。急にどうしても食べたくなり、迷った。
「ここの店は、ベリーのパンケーキがうまいらしいぞ。」
ラッドがにこにこしながら言ってきた。
「っ、じゃあ、それで…」
(見透かされたみたいでなんか恥ずかしいな…。)
ラッドが店員を呼んでテリザの分の紅茶とパンケーキのセットと、自分用にコーヒーも注文した。
「ラッド様は食べないんですか?」
「俺はいいよ。テリザが嬉しそうにしているのを見るのが、兄の務めだからな。」
「えっ…」
ストレートな言葉に頬が熱くなる。
(そんな風に言われたら…。)
タイミングよく店員が注文の品を運んできて、テリザは誤魔化すように目をそらした。
(なんだか…すごく、申し訳ない。)
―――近すぎてはいけないと、決めたばかりなのに。