カラダも、ココロも。
第2章 目覚めと、夕暮れ
革を貼った固いソファはどうにも落ち着かない。
ドアの近くには店員が立っている。
ダイヤをあしらったガラスばりの5階は社長室だ。
銀座の街を一望…とまでは言えないが、結構見える。
「いやいや、すまなかったな一臣」
目をへのじにしてニコニコと笑う狸親父が向かいのソファに腰掛けた。
ドアの近くに立つ店員は外へ出された。
「女好きの質が金になって良かったですね、喜文さん」
返事はせず、心からの皮肉を言ってやると親父から作り笑顔は消えた。
喜文とは父の名だ。
父は両手の指を組んだ。
「まあそう言うな。…実はお前に話があってな」
「言いたいことは解ってますよ。」
そう。
空港までわざわざ使用人に向かわせ、
父はわざわざこの店へ呼んだ。
その理由。
「そうか。なら、話しは早いな。」
目尻が上がり、えくぼが浮き上がる。父の本当の笑顔だ。
自分の都合のよい事でないと笑わない性格はずっと変わらない。
「お前に、ここの社長を任せたい」