
Welcome Bar
第2章 第一章 日常的に。
◆月冴視点◆
「おはようございまーす」
そう言いながら、僕はバーの扉を開けた。
扉に付いている鈴が音を立てる。
バーの中では、このバーの店長、鱗さんと先輩の琉輝さんが何やら言い争っていた。
店長は琉輝さんの腕をしっかと掴み、恐ろしい顔で睨みつけている。
「お前、前回もバンドとかで休んだじゃねぇか! 絶対に今日は出ろ!」
「嫌です! お願いですよ店長。俺今回マジで行かないと駄目なんですよ! ライブがっ……」
それからも二人はお互いに一歩も譲らない姿勢で争っていたが、奥から翔さんが歩いて来て、二人に話しかけ、やっと声が止んだ。
「行かせてあげましょうよ、店長。その分、給料抜けばいい話ですし、今日は月冴もいますし」
店長がチッと舌を鳴らし、手の力を緩めると、琉輝さんはだっと駆け出し、「ありがとうございます!」と叫んで走っていった。
琉輝さんはバーとバンドを両立している為、いつも忙しそうにしている。
今は大学も冬休みで、バンドもライブで立て込んでいるらしい。
僕はそんな二人のほぼ毎日行われるやり取りが面白くてたまらない。
店長はイライラした様子で歩いて来て、お酒のストックを始めた。
翔さんがくすっと笑いながら、店長に近づいていくのが見える。
僕もいつもの様に箒を取り出し、急いで店内の掃き掃除を始めた。
