
Welcome Bar
第2章 第一章 日常的に。
「さて、そろそろ帰りましょうか、店長」
あらかた掃除も終った頃、翔が俺に近づいて来てそう言った。
「ああ、そうするか」
バーの照明を消灯し、二人でバーの裏にある我らがシェアハウスの一軒家に帰る。
こんな素晴らしい一軒家にシェアハウスできるのも、翔が元モデル業をしていたお陰だ。
ただいま、と言いながら玄関のドアを開けると、いつものように店員の一人、蒼葉が出て来た。
「おかえりなさいです! ご飯、食べられますか? 良ければ温め直しますけど……どうせ琉輝の分もしなきゃいけませんし」
「いや、いいよ。俺たちはバーのまかないで済ましたから。風呂入って寝るわ」
蒼葉は了解ですーと言い、部屋の中に戻って行った。
俺は翔と共有している部屋に向かうと、荷物を置いて息を吐いた。
「今日も疲れたなぁ……」
カーペットの上で座っていると、翔がするりと俺の首筋に手を伸ばし、耳元でささやいて来た。
「じゃあ、店長が先にお風呂入って来て下さいね。……あ、体は綺麗に洗って来て下さいね。念入りに、ね?」
「お、おう」
不気味な笑みを口元に浮かべる翔を背に、俺は風呂場へと向かった。
