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10分屋【ARS・N】

第9章 コーヒーチケット

アキコさんは世界を股にかけるオペラ歌手。

歳は50歳過ぎくらいで、とにかく世界を飛び回っているらしい。

月イチくらいでやって来ては、コーヒーを飲みながら話しして、コーヒーを飲み終わると俺をハグしてきっちり10分で帰る。

他のマダムみたいに、キスをねだったり、セックスを求めたり、延長を要求したりはしない。

コーヒー一杯、百万円。

二「高いコーヒー…、だな。」

俺はふふっと笑った。



アキコさんが次に来たのは、ひと月後。

ロイヤルコペンハーゲンのカップをふたつ持ってきた。

ア「デンマークに行って来たのよ。カズ、このカップにコーヒー淹れてくれる?」

二「えー、このすげぇ高価そうなカップに、あの安いコーヒー淹れんの?」

アキコさんは、ケタケタ笑った。

ア「カズのコーヒーは世界一よ。デンマークでも、カズのコーヒー飲みたくて仕方がなかったわ。」

二「それはどうも。」

俺は3000円で買ったコーヒーメーカーに豆をセットし、コーヒーを淹れた。

そして、デンマーク土産のチョコレートを一緒に食べた。

ア「王室御用達のチョコよ。」

二「うん。美味いけど、俺、高いもの食べたら腹壊すんだよね。」

ア「何よそれ、あはは…。」

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