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10分屋【ARS・N】

第9章 コーヒーチケット

ア「もう行くわね、ごちそうさま。」

アキコさんは、財布から札束を出した。

二「コーヒーチケット作ろうか? 10回来たら11回目がタダになる。」

ア「カズが値引きするなんて、嵐が来るわ。明日の飛行機が飛ばなくなるからやめてよね。」

そう言って笑いながら、アキコさんは俺にハグをした。

ア「ありがと。」

二「また来てね。」

アキコさんは帰って行った。

あの高価そうなカップは、洗って戸棚にしまった。




アキコさんが次に来たのは、半年後だった。

二「いらっしゃい、久しぶりだね。今、淹れるから。」

俺がキッチンに向かおうとしたら、アキコさんが俺にしがみついてきた。

二「アキコさん、どしたの…?」

アキコさんは、力いっぱい俺に抱きついてきた。

ア「カズ…、抱いて…。」

アキコさんは、震えていた。

泣いているような、泣くのをこらえているような、どちらともわからなかった。

いつもの明るいサバサバとしたアキコさんはいなくて。

今にも折れてしまいそうな、こわれてしまいそうな女がそこにはいた。

俺はアキコさんを抱きしめ返した。

二「おいで。」

俺は、アキコさんの手を引き、寝室へ向かった。

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