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10分屋【ARS・N】

第9章 コーヒーチケット

アキコさんは、財布から札束を出した。

ア「ありがと、カズ…。」

二「ん…。」

俺はそれを受け取った。

そして、アキコさんは、いつも通り俺にハグをした。

俺も、アキコさんをハグした。

アキコさんは、部屋を出て行った。



次の日の朝テレビをつけると、アキコさんが映っていた。

喉の病気が進行してて気管を切開するという。

もう、歌えなくなるという。

ニ「マジかよ…。」

レギュラー番組の収録で局入りしても、楽屋のテレビはアキコさんのニュースを取り上げていた。

俺は、それを横目にコーヒーを淹れて椅子に座りゲーム機を出した。

松「つらい話だな。オペラ歌手から声を奪うなんて。」

櫻「命を守るため仕方ないとはいえ、気の毒だよね。」

相「オペラ歌手さんはどうなっちゃうの?」

櫻「手術が成功したら、病気で苦しむ人を助ける財団を作って活動する、って話みたいだね。財産はかなりあるみたいだよ。」

テレビでは、アキコさんの記者会見の生中継が始まった。

アキコさんは、背筋を伸ばしてしっかり前を見ていた。

記者の質問にも、顔をあげて堂々と答えていた。

記者『手術の決断は、いつされましたか?』

ア『昨夜です。命をとるか、歌をとるか、悩みましたけど、人の本当の温かさに触れて生きることを選択しました。』

松「しかし、強い女だな。こんな状況であんなにしっかり受け答えできるなんて。」

俺はゲーム機から顔を上げた。

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