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10分屋【ARS・N】

第11章 先に生まれただけの僕たち

二宮「寸志って、笑わせんなや。企業はみんな、俺に仕事依頼する時は札束積んで来んだよ。まあ、実際は振込みだけどさ。」

俺はコーヒーをすすった。

鳴海校長は、コーヒーにひとくちも口をつけていない。

鳴海「金、金って…! 君はそんなに金が大事なのか!」

鳴海校長はこぶしを握ると真っ赤になって立ち上がった。

二宮「あんたはその金がなくて俺に泣きついて来たんでしょうが。はい、10分たったよ。今日は母校への母校愛を込めてタダにしといてあげるから、帰んな。」

鳴瀬「くっ…!」

鳴海校長は、唇をかみしめたまま部屋を後にした。

俺はマグカップに残ったコーヒーを飲み干すと、手つかずの鳴海校長のコーヒーをシンクに捨てた。

二宮「我ながら、母校愛とか笑えるな。」

俺は、高校の時には芸能活動を始めていた。

だから、勉強の難しくない、仕事で休んでもなんとかなりそうな私立を選んだ。

それが京明館高校だ。

もちろん、学校にはほとんど通わなかった。

テストだけはなんとか受けて、進級して卒業した。

高校生活の思い出なんてほとんどない。

たまに学校に行っても、俺の居場所なんてなかった。

まるで幽霊が現れたかのように驚きの目で見られるか、ゲーノージンが来たとかでキャーキャー言われるか。

どちらかひとつだった。

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