テキストサイズ

10分屋【ARS・N】

第11章 先に生まれただけの僕たち

鳴海「教え子のことが気になるんですよ。厳しいけど、優しい先生です。」

二宮「へぇ…。」

鳴海校長は、エントランスまで俺を見送ってくれた。

鳴海「またいつでもお越しください。京明館はいつでも卒業生をあたたかく迎えます。」

俺は黙って頭をさげて車に乗り込んだ。

鳴海からのメールを見て久しぶりに訪れた母校は、本当にあたたかく俺を迎えてくれた。

それは、俺が有名芸能人だからか?

野球部のグランドの横を通りかかると、練習は終わったはずなのに、マネージャーがひとりで草むらをのぞき込みながら歩いていた。

ボールが残ってないか探しているのだ。

当時の京明館は、こんなにあたたかな雰囲気ではなかった。

学力が低い学校特有の、白けた感じだった。

鳴海校長の笑顔が頭をよぎった。

二枚目が台無しになるほど、くしゃくしゃの笑顔。

二宮「……、ポスターのボランティア出演なんかしねーからな。」

俺は目的地に向けて、アクセルを踏み込んだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ