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10分屋【ARS・N】

第5章 ゆるして

老婆は、年齢は80歳くらいだろうか。

きれいな身なりに、真っ白な髪。どこかのいいとこのマダムといった風だ。

初老の女性は、60歳くらいの、これまたきちんとした身なりをしている。

「母をゆるしてやってください。」

俺の問いかけに、初老の女性が答える。

「ゆるす?」

俺は意味がわからず問いかけた。

老婆が、初老の女性を振り切り、俺のもとにすがりついた。

「兄ちゃん、ごめんなさい。兄ちゃん、兄ちゃん!」

俺は、泣き崩れる老婆を抱き起こし、ソファに座らせた。

「母は、あなたを原爆で亡くした兄だと思っています。」

初老の女性が語り出した。

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