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10分屋【ARS・N】

第5章 ゆるして

「母は、あなたの映画のCMを見て、原爆で亡くした兄だと思い込んでいます。」

確かに、俺は長崎の原爆を扱った映画に出演した。

初老の女性…、老婆の娘はことの次第を話し出した。

老婆…、キヌエは、子供の頃長崎に住んでいた。

暑い夏の日、喉が渇いたキヌエは、5歳違いの兄に「水が飲みたい」とせがんだ。

自分で井戸に汲みに行けば良かったものの、まだ小さかったキヌエは兄に甘えたのだ。

優しい兄は、キヌエのわがままをきいてやり、井戸に水を汲みに行った。

その時、閃光が走った。

一瞬、白い光に町が包まれたかと思うと、爆風が吹き抜けた。

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