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10分屋【ARS・N】

第5章 ゆるして

「そうだ!」

キヌエはバッグから水筒を取り出した。

「兄ちゃん、これ飲んで?」

キヌエは水筒から液体をコップに注いだ。

俺は躊躇したが、思いきって飲んだ。

水だった。

「兄ちゃん、熱かったでしょう?お水、欲しかったでしょう…?たくさん飲んで…?」

キヌエは、俺の顔を見上げている。

俺は、キヌエに背を向けた。

目頭に熱いものが込み上げてきた。

深呼吸して、気持ちを落ち着けた。

「キヌエ、おいしいよ。もう一杯水をおくれ…。」

キヌエは、再びコップに水を注いだ。

俺は、それも飲み干した。

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