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10分屋【ARS・N】

第5章 ゆるして

「兄ちゃんは、東京で働いていたんだよ。家に帰れなくてごめんよ。」

キヌエは、一気に明るい顔になった。

「なぁんだ、そうだったの。お仕事、忙しかったの?」

「まぁね…。」

「ねぇ、兄ちゃん、抱っこして。」

キヌエは、恥ずかしそうにもじもじしながら言った。

「いいよ、おいで。」

俺はキヌエを抱き寄せた。

「キヌエは甘えん坊だなぁ。」

キヌエの髪をなでた。

キヌエの髪は白く、やせていた。

顔にはシワが刻まれ、ところどころシミがあった。

手は、節くれだち枯れ枝のようだった。

「兄ちゃん、あたたかい…。」

キヌエは俺の腕の中で目を閉じ身を任せ、安らかな顔をした。

俺は、優しくキヌエを抱きしめた。

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