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10分屋【ARS・N】

第6章 夫婦

「サエコ、飲め!」

ウエダがそう怒鳴ったのを聞いて、サエコが俺自身から口を離した。

その瞬間、俺はサエコのアゴをつかんで口を開けさせた。

片手でティッシュをつかむと、サエコの口の中の熱をティッシュに吐き出させた。

「飲まなくていいよ。」

俺はサエコの口を拭いてやった。

俺を見上げるサエコの瞳には、涙がいっぱいたまっていた。

「な、何するんだ!」

ウエダが血相を変えて俺に食ってかかった。

「時間切れだよ。それに、“しゃぶらせる”依頼は受けたが、“飲ませる”依頼は受けてねぇからな。」

俺はサエコを抱き起こした。

「向こうに洗面所があるから、手と口を洗っておいで。」

サエコは、目を真ん丸に見開くと、ポロリと涙をこぼした。

そして小さくうなづくと、ドアの向こうに駆けて行った。

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