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[現代版] 天使と悪魔

第13章 慟哭の記憶④

・横尾side

薮「瑞稀いぃーっ」



叫ぶ宏太の声に反応するかの如く、小さな声が微かに聞こえる。



「マ…マ‥ン」



瑞稀、本当にいるのか。



横「パパだ、聞こえたなら返事をしろ!」



すると―



「パ‥パ…ここ…から出ちて」



そのあとは、もう2人して無我夢中だったよ。

ギュッ!



薮「瑞稀、瑞稀」

瑞稀「ママン ヒクッ」

薮「よく頑張ったね、いい子ほんとうにいい子」



どうして、そんな所に穴が掘ってあったのか。



横「良かった無事で」

瑞稀「パパあぁーヒクッ」



このときの俺達には分からなかったが、はっきりしていたことは。

部落が襲われる前…

この子は俺達の帰りを今か今かと待ちわびながら。

入り口の所で立っていたらしいこと。

そして―

逃げまどう大人たちに押され穴に落ち。

その上に倒れた連中か蓋の役割をした事によって助かったんだろうって事だった

まだ3歳にも満たない子が独りで、クッ!

俺はその恐怖を思うと胸が詰まり、堪らない気持ちになる。

どんなにか心細かっただろう生きててくれて有り難う

そう思いながら…

こうして俺たち親子3人は無事、再会を果たすことができ。

が、まだこのときは。

このあと離ればなれになってしまうことになろうとは思いもせず。

なんとか他の連中の行方を知ることは出来ないものかと行動を起こしてく。

現状が全く把握できてないその中で。






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