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(旧)短編☆中編小説集

第19章 魅入られて愛

・藤ヶ谷side

北「おふくろ…」

藤「薄々気づいていたんだろ?お前が俺を受け入れてくにつれ母親の意識が自分から遠ざかって行くのを」

北「それで少しずつ攻めていたってわけ」

藤「俺らの世界へ行くって事は親と離ればなれにしてしまうことを意味する」

北「くっ」



だから無理強いは出来ない



藤「相手の気持ちを自然と自分の方へ寄せる事でそうなるように仕向けるんだ」

北「ずるいわ、んなやり方きたねぇよ!クッ」



ギュッ―



藤「ごめん北山だけど俺はお前と一緒にいたい分かってくれ」

北「まだ好きになんかなってねぇ」

藤「なってるさもう」

北「どうしてそう言えるんで?」

藤「0時になれば分かる」



最後の選択が、そこで待っているから。



北「あのガキは?」

藤「孤児だ」

北「‥‥っ」

藤「暗示を掛けここへ連れて来た北山が人間界へ残らない限り解ける事はない」

北「んだか」

藤「母親も、そうでなければ記憶は消えたままでお前の姿すら見えね」

北「つまりは、それが深夜0時にハッキリする。そういうことか?」

藤「あぁ、フッ」



お前が残る方を選択したら俺との事は御破算になっちまう。



北「まだ決まったわけじゃないって事だな」



よく考え答えを出せ。

こればかりは北山の気持ちしだい俺にはなんの権利もない。

精一杯やった…

どんな結果になっても後悔はしないよ。



北「話しは分かった、それまで独りにしてくんね」



バタン!



河「正直すぎるぜ」

藤「郁人」

河「心配になって来てみれば案の定あそこまで教えちまう事はねぇだろ」

藤「あいつの悲しむ顔は、見たくはないから」

河「随分と惚れ込んだもんだ、フッ」

藤「弱々しい北山なんて、嫌なんだよ」

河「んっ?」

藤「強く、毅然としていて欲しいあいつらしく」

河「そっか」

藤「お前は?」

河「昨日、婚儀を済ませた戻って来たら会わせる負けないくらい可愛い俺の花嫁をよ」

藤「楽しみにしている」



深夜0時まであと数時間、俺は静かにその時を待った

何もかも受け止める覚悟で





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