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(旧)短編☆中編小説集

第20章 男と女の境界線

玉「つまり王子さまも婚儀には乗り気じゃないかもしれないって言いたいわけ」

千「げぇーもしそうだったとしたら、結婚しても上手くはいかないかもしれないじゃん」

ニ「政略結婚なんて、そんなもんじゃない」

千「うわ庶民で良かったぁ俺、ハハッ」

宮「そうだね、やっぱ好きな人と結婚したいし」



庶民じゃなくてもそうさ。

出来うることなら、惚れた奴と生涯を共にしたい。

でも…

それが無理な奴もいるんだ世の中には、フッ!

その数日後―

雨の中、ひとり街を歩いていると。

んっ?あれは。

路地裏の隅で傘もささず、しゃがみ込んでいる北山の姿が目に入り。

あいつ、なにやってるんだ



北「くっ…ガクガクッ」



ちょ、震えてるじゃん。



藤「北山!」

北「…おっ‥ま」

藤「風邪引くだろ、こっちへ来い」



グイッ!



北「はっ、放せ」

藤「いいから、言うことを聞け」

北「わっ」



その身体を抱き上げた途端に。



藤「なっ!?」

北「おっ、降ろしてくれ、頼む」



どうして、こんな。



北「自分で歩くってば」



バタバタッ!



藤「いいから、ジッとしていろ」

北「くっ」



予想以上に軽い北山を不審に思いながらも近くにある宿へと駆け込む。



藤「悪い部屋開いてるか」

宿主「ダブルなら」

藤「構わない通してくれ」

宿主「かしこまりました」



そして―



藤「まずはその濡れた服を脱いで風呂へ入って来い」

北「よせ、やめろ俺に触るなぁーっ」

藤「‥‥っ」



今、なんに触れた?俺の手



北「見ねぇで…ガクガク‥クッ…藤‥ヶ谷」



北山お前、まさか嘘だろ?

それは小刻みに震える身体が急に弱々しく見えた瞬間だった。

ギュッ!

思わず抱きしめずにはいられないほど。

なんで隠していたんだよ。

慌てたように、身を縮めるこいつを愛しく感じてしまったとき。

既に…

俺の心は落ちていたのかもしれない。

恋ってやつに―





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