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ふたり、溺愛中

第12章 その婚姻届は、間違いだよね?

「…また、持ってきてくれたのかい?」


「そうよ!
だって紫苑、すぐなくしちゃうんだもの」




私も本物の書類を見たのは、ほんの数ヶ月前。

悠さんと一緒に役場へ提出したから、多分間違いはないと思うの。


あれは…………






「保証人のサインも、もう全部書いてるから、後は紫苑のサインだけなのよ。
出すのはあたしがしてあげるから、今夜はサインだけでもちょうだいね」


「それはそれは…準備がいいね」





_____婚姻届…!?


え、どういう事?

結婚するの?

えっ、でも悠さんと私は結婚してるんだよ。




あの男性は悠さんじゃない、他の誰かなの?

確かに、シオンって違う名前みたいだけど…。






「わかったよ。
じゃあ、これは預からせてもらうね。
それより、早く行こうか」

「あん、待って!
ダメよ紫苑っ!」



グイッとひき止めた女性が、そう言って男性の顔の前に婚姻届を突き出した。




「今ここで、サインしてちょうだい!
でなきゃ、ここから一歩も動かないわ」


「…おやおや、こんな所から動かないなんて、困ったお姫様だね」





あの女性は無理矢理に結婚させようとしてるみたい。

何だか、気まずい雰囲気だなぁ…。



なんて、ちょっぴり他人事のように思えたのも、一瞬だけだったの。



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