
私と彼の関係
第2章 はじまり
俺は反論できなかったため、仕方なく藤崎の指示通り原付を走らせた。
「ここ、ここ」
10分くらい走らせたとき、藤崎が後ろから前方のアパートを指さした。
ブウォンブウォン…カチ
俺はエンジンを切って止まった。
「降りて」
「え、なんで。アパート前まで送ってよ」
不満そうに答えながらも原付から降りる藤崎。
そう、まだアパートまでは少し距離がある。
いやでも、目では見えるくらいだから、そう遠くはない。
「夜中にあんまり住宅地を走りたくない。うるさいし迷惑だろ。しかもこの原付中古だから余計うるせぇんだよ。」
俺も原付から降りながら、答えた。
「…」
「あ、メット返して」
藤崎に被らせていた俺のヘルメットを返すように言った。
ちなみに俺はノーヘル。
しかも原付の二人乗りは違反。
これ運良く警察には会わなかったけど、出会ってたら俺終わってたからな。
「……はい。」
藤崎が渡してきたヘルメットをハンドルにかけて、原付を押しながら歩き始めた。
藤崎も隣を歩いてくる。
にしても、さっきから無言の藤崎。
気にならないはずもなく…
「なぁなんでさっきから無言なわけ?」
ちらりと藤崎を横目で見ながら言った。
「…いや、なんか人様の迷惑とか考える人だったんだって思って」
と、俺の方を一切見ずに答えた。
てか、は?
今なんとなく?いや確実に馬鹿にされたよな?
「おい、それどういう意味だ」
半分睨みながら俺が聞くと、ちらりと俺を見た藤崎は睨まれていることに気付いただろう。なのに、
「いや、人のプライベート邪魔するやつに迷惑とか考えるやついないと思ってたから」
フッと少し鼻で笑いながら答えやがった。
……………くそ腹立つ。
「あれが彼氏なら俺かって話しかけなかったけどな。援交してるお前が悪いだろ。というか、お前のプライベートが援交って終わってんな」
真顔で言ったせいか、思ったより冷たい声が出た。
で、言ってから気づいた。
ムカついて言いすぎたことに。
やべ。キレるか?
恐る恐る隣を見ると、さっきと同じく俺の方を一切見ずに歩いていた。
そしてそのまま口を開いた藤崎は
「…そうだよ。私終わってるから。」
と言った。
その声はどこか悲しい、寂しいと言っているような気がした。
