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私と彼の関係

第2章 はじまり


藤崎は愛して欲しくて愛して欲しくてたまらないのだろう。

ただ恋人を作り、自分が愛し、相手から愛されるというのは別れた時に代償が伴う。

傷、喪失感、深い寂しさ、満たされることがなくなる心、塞がらない心の穴…

付き合った月日が愛された月日が長ければ長いほどそれらは強く、深く、大きくなる。

だから、藤崎は一夜の関係で終われ、絶対に優しくしてもらえるオッサンを相手する援交に目をつけたのだろう。

そしてsexを愛と置き換えたのだろう。

そんなことをしても幸せにはなれないのに。

藤崎はもっと自分の体を大切にしないといけない。


「……ごめん。何でもない。ヤらないにしろ、ベッド行こ。もう眠たいから」

そう言って俺から離れた藤崎は空になった缶をキッチンへ持っていき、俺をベッドのある場所まで案内した。

ギシッ

藤崎がベッドに上がる。

部屋は真っ暗、ただ月の光だけがベッドの上にいる藤崎を照らしていた。

「早くおいでよ。寝よ。」

ファサッと薄い掛け布団をめくって言った。

「あぁ。」

ギシッ

俺もベッドに上がって布団に入った。

「じゃおやすみ」

そう言って俺に背を向けた藤崎。

「藤崎」

「ん」

返事はするが、こっちは向かない。

「藤崎」

「何?」

2回目呼びかけると、藤崎は俺の方に顔を向けた。

チュッー

その瞬間俺は藤崎にキスをした。

チュッチュッ…チュッ

何度か唇に触れるキスをしたあと、最後、おでこにキスをした。

「…エッチしないんじゃなかったの?」

「しない」

そう言いながら頭を撫でた。

「俺がヤる以外の男の利用価値を教えてやる。ヤる以外なら俺を好きに使えばいい」

「私のことが嫌いなのにそこまでする理由ある?」

「……このままじゃお前が壊れそうで心配だから。」

「いい子ちゃん。偽善者。余計なお世話」

「なんとでも言え。」

助けないと後で後悔することを俺は知っている。

ギュ

今まで頭を撫でていた手を離して、軽く抱きしめた。

「もういい。好きにしたら」

反抗的に言いながらも、離れようとはせずにむしろ、俺の胸に頭を寄せて藤崎は眠っていった。


「……もう壊れていく人は見たくねぇんだよ。あんな姿は二度と…」

ポソリと呟いて俺も眠りについた。

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