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薔薇寮の淫

第10章 震える古傷―

・北山side

そんなある日―



藤「戻して来たって」

北「なんで?」

河「太輔お前も知ってるだろ?陵辱され続けたあげく心が壊れてしまった奴がいたことを」

藤「まっ、まさかそれが」

河「飯田の弟さ、クッ」

藤「じゃ、そいつは」

北「太輔?」



とたん隣にいた、こいつの身体がガタガタと小刻みに震え出し。



北「おい、大丈夫か?しっかりしろ」



ギュッ!

俺が慌てて抱きしめると、胸の中に顔を埋めか細い声を発してよ。



藤「つっ…続けて‥くれ…郁人‥クッ」

河「やっばな、そうなると思った。だから今まで話さなかったんだ」

北「えっ」

河「宏光、太輔をしっかり抱き留めてやっててくれ、この後の話しはこいつには辛いことだろうから」

北「分かった」



俺が傍にいる太輔。



藤「心配…すんな、フッ」

北「強がるんじゃね」



俺には分かる、お前の中で古傷が疼いているのが。



河「続けるぞ」



それから五関も飯田もそいつの心と身体の傷を癒そうと必死だったらしい。

だが…



藤「うわああっ」

北「落ち着け太輔、落ち着けってば」

藤「ううっ、あぁ、同じだ俺もそうしようとした」

戸「でも、しなかっただろ北山の存在があったから」

河「お前は、死の誘惑から勝ったんだよ太輔」

藤「けど、俺には分かる!その悲しみ辛さ絶望・死の声が耳に聞こえて来る生々しい感覚が…ガクガクッ」

北「太輔、俺を見ろ」

藤「くっ、ひろ」

北「傍にいるから、ずっとお前の傍に ニコッ」

藤「うっ…ひっ‥ろ…クッ」



怯えたように震える唇に、俺はそっとキスを落とす。





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