薔薇寮の淫
第10章 震える古傷―
・北山side
入って来た頃の横尾さんは
クリクリとした愛くるしい瞳でよく笑う、そんな奴だったという。
藤「それが、なんで?」
河「同室となった飯田に、すぐ手をつけられてしまった話しは前にもしたよな」
藤「あぁ」
河「その飯田とのやり取りによって渉の心の中でどんな変化が生じたかまでは俺も知らない、だが」
気がつくと、あいつの想いは飯田と同化していた。
そう言うのか。
北「どういうことで?」
河「さぁ、それは渉に聞くしかないんじゃないの」
藤「でも、わたは話さないだろ」
北「たぶん、フッ」
河「ただ」
北「んっ?」
太輔が、俺の存在によって救われたように。
飯田もまた、横尾によって救われたんだと郁人は言った。
河「だから宏光、お前だったらあいつの気持ち分かるんじゃないの?フッ」
俺だったら…
その夜、俺は太輔の身体を抱きしめるようにし眠りにつく。
こいつの傷を癒せるのは、自分しかいない。
そう思いながら…
でも、その時ふと気がついたんだ。
横尾さん、お前もそうだったのか?
飯田の苦しみ悲しみを一身にその身に受け何とか癒してやろうと。
で、どうだったんだよ?
それは出来たのか、出来なかったのか?
もしかして、出来なかったから今も。
お前は苦しみ、孤独の中に身を置いているんじゃないのか?
やっぱ一度、腹割って話さなきゃならないな。
お前と…
こうして静かに夜は更けて行った。
遣りきれない思いと共に―
・
入って来た頃の横尾さんは
クリクリとした愛くるしい瞳でよく笑う、そんな奴だったという。
藤「それが、なんで?」
河「同室となった飯田に、すぐ手をつけられてしまった話しは前にもしたよな」
藤「あぁ」
河「その飯田とのやり取りによって渉の心の中でどんな変化が生じたかまでは俺も知らない、だが」
気がつくと、あいつの想いは飯田と同化していた。
そう言うのか。
北「どういうことで?」
河「さぁ、それは渉に聞くしかないんじゃないの」
藤「でも、わたは話さないだろ」
北「たぶん、フッ」
河「ただ」
北「んっ?」
太輔が、俺の存在によって救われたように。
飯田もまた、横尾によって救われたんだと郁人は言った。
河「だから宏光、お前だったらあいつの気持ち分かるんじゃないの?フッ」
俺だったら…
その夜、俺は太輔の身体を抱きしめるようにし眠りにつく。
こいつの傷を癒せるのは、自分しかいない。
そう思いながら…
でも、その時ふと気がついたんだ。
横尾さん、お前もそうだったのか?
飯田の苦しみ悲しみを一身にその身に受け何とか癒してやろうと。
で、どうだったんだよ?
それは出来たのか、出来なかったのか?
もしかして、出来なかったから今も。
お前は苦しみ、孤独の中に身を置いているんじゃないのか?
やっぱ一度、腹割って話さなきゃならないな。
お前と…
こうして静かに夜は更けて行った。
遣りきれない思いと共に―
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