ご主人様は突然に
第6章 家事手伝い、スタート
「―――試すようなマネしねぇで
普通に聞けばよかっただろ。
あんな嘘ついて……めんどくせぇ……」
やっと口を開いた時には
カオルは落ち着きを取り戻していた。
でも瞳がわずかに潤んでいて
瞳を閉じて必死に涙を堪えたのだと
気づかずにはいられなかった。
なんで……
カオルが泣きそうになってるの?
「うん……ごめん。
ホントめんどくさいよね……」
「ああ、お前がめんどくせぇのは
昔から知ってたけど、ここまでとはな。
つーか、ただの知り合いが
いっしょに風呂入ったりしねぇだろ」
「それは……そうだけど……」
「俺はお前を幼なじみだと思ってた。
それに俺のこと好きでいてくれてると
思ってたんだよ……」
「え……」
「俺は初めて会った時から
お前のことが好きだった」
「ええっ!」
カオルが、私を?!
驚いてカオルの頬から手を離し
なんとなく距離を取る
「……なんだよ、その反応。
てか、好きでもねぇのに
いっしょに寝たりするかっての。
それくらい気づけよ」
「えっ?!でも……」
いっしょにお風呂に入ったり
同じ布団で寝たり
そうするのが当たり前というか
普通すぎて疑問に思わなかったし!
「お前はどうなんだよ?」
「ど、どうって?」
「俺のこと、どう思ってた?」
「カオルのこと……」
……どう思ってたかな。
確かに異性として
意識はしたこともあったけど……
「好きだったよ……人として」
たぶん、恋愛感情とは違った。
今となっては分からないけど。
「……そうだろうと思ってた」
カオルが深くため息を吐く。
「おれを恋愛対象として見てないって
なんとなく分かってたから
¨好きな人ができた¨って聞いた時
もう会うのはやめようって思った。
でも―――」
私の手にカオルの手が重なる。
いつもならすぐ振り払うのに
カオルの顔があまりにも真剣で
手を動かせなかった。
「高校で再会して……
やっぱ好きだと思った。
なのにお前はカズを好きになるし」
「それは……」
「なんで俺じゃねぇの?
俺にしとけよ、マナカ」
「カオ―――ッ!」
優しく、くちびるがぶつかった。