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ご主人様は突然に

第7章 《未定》

~カオル side~



気を失うように眠りについた

マナカの寝顔を見つめながら

ため息を吐く。



完全に調子に乗りすぎた。



いや、調子に乗ったんじゃなくて

欲望に負けた、が正しい。



「……はぁぁ………」



中二のあの日に戻りたいと思った。



過去を振り返る事はあっても

戻りたいと思ったのは初めてで

正直、戸惑ったけど



あの日の¨俺¨が

マナカにちゃんと向き合ってれば

俺たちの関係は変わっていたかも

しれないと思ったからだ。



俺もバカだな……

欲しいなら離れるべきじゃなかった。



後悔しても遅いけど



やっぱりお前が欲しいよ、マナカ。



乱れた前髪を整えてやり

白い頬に触れる。



佐藤に¨何もしない¨と言っといて

思いっきり手ぇ出してるし……



いや、佐藤には

¨下半身のブツを突っ込むな¨

的な事を言ったんだったか……



突っ込んではないからセーフだろ。



佐藤には内緒にしとこう。



寝室を出てリビングに戻ると

携帯に着信が入っていた。



……トムさん?



すぐに折り返すと

トムさんの渋い声が届く。



「カオル、今マナカは
お前んちいるんだろ?」


「いるよ。どうかした?」


「カズを見つけてな。
夜にウチに来るように言ってある。
お前も来るか?」


「……見つけたんだ。
マナカを送るついでに寄るよ」


「おう。なぁ、カオル」


「なに?」


「お前……マナカのこと
今でも好きか?」



トムさんの声が硬い。



俺の気持ちは知ってるはずなのに

改めて尋ねられて少し驚いたけど

トムさんなりに

いろいろと考えてるんだろうと思い至る。



「もちろん。気持ちは変わってないよ」


「そうか……」


「もしもの時は―――
俺がマナカをもらっていい?」



俺が尋ねるとトムさんが

ふっと静かに笑うのが聞こえた。



「バカ野郎。そこは……
¨お嬢さんを下さい、お義父さん¨
って言うのが定番だろうが」


「ハハッ、そうだね。
その時はそう言うよ¨お義父さん¨」



そう言うとトムさんはもう一度笑って

¨マナカのこと頼むぞ¨

と言って電話を切った。


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