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ご主人様は突然に

第7章 《未定》

~カオル side~



マナカから鍵を受け取り

そっとドアを開けて確認すると

カズの靴がすでにあった。



リビングの方から

かすかに会話が聞こえてきたけど

よく聞き取れない。



おそらくトムさん達だけで先に

カズと話をしてるのだろう。



玄関の外で待たせていた

マナカに振り返り、口に指をあて

¨静かに¨と小声で伝えると



コクンと頷いてマナカは

そっと玄関に入る。



静かに靴を脱いで

二階へ向かうマナカを見送り

俺はリビングのドアまで近づく。



どうしてこんな風に

コソコソしてるのかというと

とりあえず家に着いたら着替えたいと

マナカが言ったからだ。



まぁ俺のパンツを穿いてる状態は

落ち着かないんだろうと思い

着替えて降りてくるまで

待つことにした。



ドアの横に寄りかかってると

結構はっきりと会話が聞こえてくる。



「違います。お義父さん達も
ご存知のとおり俺は酒に強いので
酔い潰れるなんて考えられないです。
それなのに気づいたら彼女がいて……
俺もなにがなんだか分からなくて」


「なにも覚えてない、と?」


「そうです」



……なるほど。

確かにカズは酒に強い。



もしかしたら

俺よりも強いかもしれないのに

記憶をなくすなんておかしい。



「口だけならなんとでも言えるだろ。
それに実際その相手は
身ごもったらしいじゃねぇか」



まぁ……トムさんからすれば

浮気よりも¨そっち¨のほうが

気になるよな。



「それは……」



静かになったリビングの様子から

カズが口ごもってるのが分かる。



記憶にないからこそ

自信を持って否定ができないんだろう



ちょっと詰めが甘かったな、カズ。



いくらなんとも思ってない相手でも

食事に行った時点で¨関係の土台¨は

できてしまう。



ほんの少し頭がキレて

その上ずる賢い女だったら

お前みたいな男と一夜を過ごしたいと

考えちまうんだよ。



それも手段を選ばずに。



でも……

さすがにフォローしてやんねぇと

可哀想な気もする。



マナカが欲しいくせに

俺も¨幼なじみ¨は

見捨てられないタチのようだ。



はぁ、とため息を吐いて

リビングのドアを開けた。


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