ご主人様は突然に
第1章 戦力外通告!?
「ママーっ!おきてー!」
「……んー……?」
わずかにまぶたを開けると
部屋が明るかった
電気をつけたまま
昼寝をしてしまったのかと思いつつ
モゾモゾと動く隣に目をやると
センが布団に潜り込んでいた
「おきた~?」
私の顔を覗き込んでくる
可愛い頬を撫でてると
ガバッと布団を剥ぎ取られた
ビクッとして目を向けると
母が仁王立ちして私を見下ろしていた
「マナカ!もう昼過ぎよ。
いい加減、起きなさい」
「……えっ……昼……?」
「寝てなかったの?
いくら起こしても起きなかったわよ」
「んー……」
寝返りをうち
携帯を探して時間を確認すると
確かに昼過ぎだった
それも翌日の昼過ぎで
長時間眠っていたことに気づく
「ママねすぎだよー」
「ホントだー……めっちゃ寝たー」
頭をバサバサッと掻き乱すと
母がため息を吐いた
「寝てないなら言いなさいよ。
死んだように寝られたら驚くでしょ」
「あ……ごめん」
「たった今ナナコちゃん来たわよ。
同窓会行くんでしょ」
「行くけど……
ナナコ来るの早っ!」
身体を起こすと
センが私の太ももの上に乗り
ギュッと抱きついてきた
甘えん坊だなあ。
そう思いつつも
抱きつかれて嬉しい私は
センを抱きしめ返す
「マサキといっしょに来たのよ」
「ああ……お兄ちゃんも来たんだ」
「あのねっママ!
マーくんとナナちゃんがね、
おこづかいくれたよ!これっ」
広げられた小さい手のひらには
五百円玉が二枚あって
センはとっても嬉しそうだ
「良かったね。お礼は言った?」
「うん!ありがとうっていったよ。
ぼく、さきにしたにいってるね!」
そう言ってセンはあっという間に
部屋から出て行った
センがいなくなると母は
顔から笑みを消してベットに近づき
私のおでこをツンッと小突く
「あんたは無理しすぎ。
家族にくらい、たまには甘えなさい」
「……うん」
「外食するのも久しぶりでしょ。
センのことは気にしないで
今日は楽しんできなさい。分かった?」
「うん……ありがと……」
母の優しさが身にしみて
瞳からそっと涙がこぼれた。