ご主人様は突然に
第2章 波乱の同窓会
佐藤くんと乾杯を済ませると
いろんな人が乾杯を求めて
私に話しかけてくれた。
「それじゃ岩熊さん
またあとで話そうね~」
最後に話しかけてくれた子と
当たり障りない会話を済ませると
アヤが二杯目の梅酒を渡してくれる
「お疲れ。良くやったマナカ。
グッジョブ!さ、焼き鳥お食べ」
「うん。お腹空いた……」
目の前に置かれた串の盛り合わせから
キャベツ、豚バラ、サガリを取り
口に運んでいると
ナナコがアヤに耳打ちをしていた
「うえぇっ!カズがっ!?」
サガリを吹き出しそうになるのを
グッと我慢して二人に目を向けると
ナナコは手を合わせて
ごめん!のポーズをして
アヤはハッとして手で口を押さえた
「ハハッ、気にしないで~」
ナナコが笑ってごまかすと
こちらに注目していた周囲は
それぞれの会話へと戻っていく
「……マナカ。本当なん?」
眉をひそめて尋ねてきたアヤに
コクンと頷いてみせると
アヤは突然ガバッと立ち上がり
部屋を出て行ってしまった
「えぇー……?」
「た、たぶんトイレでしょ。
……ほらマナカ飲んでっ」
「あ、うん」
ナナコに促されて
梅酒をゴクゴクと喉に流す。
アヤは昔から謎な行動が多い
もう慣れてるし、どうした?なんて
考えるだけ無駄だったりする
特に気にせずサガリを食べていると
左隣の佐藤くんに
トントンと肩を叩かれた
「岩熊さん。梅酒が好きなの?」
「あっうん。ビールは苦手で」
「そうなんだ。
じゃ梅酒たくさん飲んでね」
「うん、そうする」
気を遣ってくれてありがとう、
と気持ちを込めてにこっと微笑むと
佐藤くんがバッと私から目を逸らした。
あれ。逸らされた?
「岩熊さんっ、焼き鳥も食べてる?
ほらっこのレバーとか皮も美味しいよ!」
でも気を遣ってくれてる。
ありがたい。
けどね……
「あのっ、私っ……」
レバーと皮は嫌いなの。
その二本を取ってくれようとする
佐藤くんを止めようと
伸ばされたその腕を掴んだ時―――
「佐藤、待て」
聞き覚えのある声が頭上から聞こえて
私はビクッと身体を固めた。