ご主人様は突然に
第2章 波乱の同窓会
こ、この声は……!
声だけで分かってしまう自分が
どうしようもなく嫌で
ギュッと目を閉じた。
「なに?落合」
振り返ったであろう佐藤くんが
ソイツの名前を呼んだことで
それは確信に変わった
「ああ……コイツな、
レバーと皮は食べれないんだよ」
その一言にドキッとした
なんで?
「えっ、そうなの?岩熊さん」
「あ……うん」
「うわーごめんね!
俺そういうの気が利かなくてっ」
「ううん。気にしないでっ」
佐藤くんの顔を見れずに
返事をしていると
頭上で、フッと笑う声が聞こえた
「佐藤、取ってやるなら
豚バラとサガリだけでいーよ。
それでコイツ満足すっから。
……だよな?¨モナカ¨」
モナカ。
私の名前¨マナカ¨をモジッて
バカにした呼び方。
てか、なんで……
私の好き嫌いなんか覚えてるわけ?
「あっ、そうなんだっ?
もうないから注文しとくよ。
……岩熊さん?腕……っ」
腕を掴んだまま離さないでいると
佐藤くんが顔を覗いてきて
私の顔を見て動きを止めた
きっと今の私……
泣きそうな顔してる。
佐藤くん、ごめん。
「も、もう注文しなくて大丈夫っ。
大丈夫だから……っ
ここに、いてくれない?」
「えっ……あ、うん……」
戸惑いながらも
話を合わせてくれる佐藤くんは
たぶんいい人だ
「おい。モナカ」
ソイツに肩を掴まれて
ビクッとしてると
「ちょっと、カオル!」
ナナコがソイツの手をはたいて
肩からどかしてくれた
「なんだよ?赤坂」
「あんた仕事中でしょ。
ここで油売ってないで戻ったら?」
「あー……そうだな。
佐藤、二次会ってどこでやんの?」
「駅前のカラオケだけど……」
「分かった。じゃーごゆっくり」
足音が去っていくのを
耳をすまして聞いていると
「マナカ、ごめん」
「岩熊さん……大丈夫?」
ナナコが謝ってきて
佐藤くんも心配そうに
声をかけてくれる
ソイツの気配はもうない。
「大丈夫っ。ちょっと
お手洗い行ってくるねっ」
笑顔を作ってその場を離れた。