ご主人様は突然に
第2章 波乱の同窓会
「岩熊さんがママだなんて
いまだに信じられないなあ……」
「え?」
携帯から顔を上げた佐藤くんが
つぶやいた言葉に顔を上げると
佐藤くんは真面目な顔をしていた
その時初めて
距離が近いことに気づいて驚く
「岩熊さんは変わらないね」
「……そ、そう?」
「うん。岩熊さんのこと
ずっと見てた俺が言うんだから
間違いないよ」
ん?ずっと見てた?
どういう意味?
佐藤くんの顔を
マジマジと見つめてみても
目を細めて穏やかに笑うだけで
なにも読めない
でも褒められたってのは
なんとなく分かる。
とりあえず、お礼を……
「えっと……ありがとう?」
そう返すと佐藤くんはハハッと笑う
「うん。どういたしまして。
ね、ずっと気になってたんだけど
緒方のどこを好きになったの?」
「えっ」
「確かに緒方はカッコいいけど
男としては頼りないっつーか……」
「フフッ確かに。頼りないよね」
「頼りないとこが好きなの?」
「まさか。頼りになる人がいいよ」
佐藤くんは首をかしげる
「カズにもちゃんと
良いところあるんだよ。
どんな時も優しくて
嘘だけはつかないところとかね。
たぶんそういうところに
惹かれたんだと思う」
「……それだけ?」
佐藤くんは意外そうに
目を見開いている
「うん。それだけかな」
「まじかー……」
佐藤くんはガクッと頭を垂らして
目元を手で覆い、ため息を吐いた
え。どうしたんだろ。
「あの……佐藤くん?」
「……顔はタイプだったの?」
「うん。どストライク」
「でも、顔で言ったら
他にも落合とか……」
「アイツは無理ッ!」
私が即答すると
佐藤くんはやっと顔を上げた
「あ、そうなんだ……
じゃ……俺は?」
「えっ。佐藤くん?」
「そう、俺。
俺のことはどう思う?」
携帯を再び見るふりして
佐藤くんが顔を近づけてきた
なんでそんなこと聞くんだろ。
少しドキッとしてしまった
「俺っ……」
佐藤くんが
なにか言いかけたとき―――
「岩熊さんっ!!」
最後に乾杯した女の子が
私のすぐ後ろに立っていた。