ご主人様は突然に
第2章 波乱の同窓会
「分かったからっ、
いい加減手を離してよっ!!」
小林さんが甲高い声を出すと
カオルは顔を歪ませた
「あーうるせぇ。
まーブスが移ると困るから
もう手は離すけどよ、
今日の分の会費くらいは
ちゃんと払って帰れよ?
佐藤!コイツもう払ってんの?」
「えっ!あ、うん。
先に貰ってるから大丈夫!」
突然、話を振られたにも関わらず
瞬時に理解して返すなんて
佐藤くんは出来る男だ
「よし。じゃーさっさと帰れば?
その顔見てると胸クソわりぃから」
「言われなくても帰るわよっ!!」
そう言って小林さんは部屋を出て行く
ピシャッと音を立てて
ふすまが閉められたのを合図に
誰かがブッと吹き出した
「……アハハッ!
カオル、お前まじ最高っ!」
「どブスて!言い過ぎだろ。
小林そこまでブスじゃねぇよ」
「てか、ブスって思っても
なかなか言えねぇだろー」
ゲラゲラ笑いながら
数名の男子が言葉を漏らすと
「思ったことは我慢せずに
言わねぇと気持ち悪いだろ?
それに俺は今まで生きてきて
嘘をついたことがないからな」
カオルが放った言葉で
さらにドッと笑いが起こり
ピリピリしていた空気が
和やかな空気へと一変した
……なんなの。
まさか、助けてくれた?
呆然とする私に
カオルは近づいてきて
突然目の前でしゃがみ込んだと思えば
私の顔を見てにやりと笑う
「お前もよく言い返したな」
そう言って私の頭をポンポンする
その触り方が優しくて
カオルが触ってるなんて
到底思えなくて
不覚にも、ドキッとした
えっ。
なんでドキッてすんの私!
ていうか、
なんで頭触るわけ?!
「触らないでよっ」
頭に乗った手を払いのけると
「なんだよ。褒めてやったのに」
不服そうな顔をして立ち上がり
カオルは私から離れてった
なにアイツ。
褒めてやったって……
意味分かんない。
けど……
助けてくれたこと¨だけ¨は
感謝するわ。
口が裂けても
直接は言いたくないから
もちろん心の中で。
ありがと、カオル。