ご主人様は突然に
第3章 お持ち帰りですか?
靴を脱がせて玄関に投げ捨て
リビングに移動した
あー……
ソファーに寝かせようとして
動きを止める
この体勢からどーすんだ?
おんぶの体勢からの寝かせ方が分からず
とりあえずそのままソファーに座ると
その揺れでマナカが¨んー¨とうなった
そうか。
このまま腕を離せばいいのか。
「おい、腕離すぞ」
「んー……?」
首に絡まる細腕を剥がし取ると
マナカは首を仰いで
ソファーにもたれかかった
目は閉じたまま、眉を寄せている
「水飲むか?」
「んー……水ー……」
「待ってろ」
冷蔵庫からペットボトルを取り
コップに注いでいると
「はやくー……カズぅ……」
マナカがボソッとつぶやく
チッ
カズと間違えてやがる。
「ほら水」
イラッとしながらも
コップを渡してやると
勢いよく飲んでいく
ぷはーっと飲み干したかと思えば
俺の顔を見て眉をひそめた
「……なんで……浮気したの?」
「は?」
「もう……浮気しないって
あの時、土下座して約束したじゃん!」
まじか。
アイツ土下座して謝ったのか。
「嘘つかないってのがあんたの
唯一のいいところだったのに!」
他にもいいとこあんだろ。
「しかも妻だけEDってなに!?
治療方法とかあるだろ普通ッ!」
「……は?」
グイッとコップを押し返してきて
マナカは俺の胸ぐらを掴む
「起たねぇからって諦めんなよ!
突然、女として見れねぇとか
離婚とか言われても分かんねぇよ!
それなのに小林相手にしたら
起って嬉しかったか?あ?
嘘つかないって言っても
言ってわりぃこともあんだろ。
私じゃもう起たねぇって
ハッキリ言ってんじゃねぇ!
戦力外通告か?
お前、監督気分か?
監督でも選手と話し合いを
設けるだろうが!ああ?」
まくし立てるように言われて
さすがの俺も呆然としていた
「私……もう若くないけど……」
そう言ってガクッと頭を垂らして
胸ぐらを掴んだ手を震わす
声もわずかに震えていて
泣き始める、と思った
「おいっ……」
泣かれるのは苦手なんだよ。
久々に焦っていた。