ご主人様は突然に
第3章 お持ち帰りですか?
夢を見ていた気がする
結婚して私がセンを妊娠した頃に
カズが浮気した夢。
経緯も登場人物も
現実とは少し違ったけど
カズは夢の中でも土下座してて
変な感じがした
プロポーズされた時も
浮気が発覚した時も
カズは土下座していて
もはや土下座の定義が分かんないけど
カズにとっては
ここ一番のポーズなのかもしれない
でも、これだけは言いたい。
土下座は私が強要してるわけではなく
カズが勝手にしてたということを!
……てか、超頭痛い。
なにこれ。
「ん“ー………」
ガンガンする。
なんか二日酔いみたいな……
はっ!として勢いよく起き上がると
余計に痛みが増した
「……っ!……痛ッ………」
こめかみを押さえて目を閉じ
痛みに耐えてると
私の横でモゾッとなにかが動いた
「……セン?……ママ頭痛いから
ごめんけどおばーちゃんのとこ行ってて?」
さみしがり屋のセンが
夜中に潜り込んだのだろうと思い
そう声をかけたけど
離れるどころか腰に抱きついてきた
「………」
でも抱きつかれた感覚が違う。
センのよりずっと太い腕が
私の腰に巻きついていて
そばで感じる温もりも
子供のセンとは違うのに気づく
ゾクリとした
センじゃ……ない。
そっと瞳を開けると見知らぬ部屋だった
ベットの他にはなにもなくて
ずいぶんシンプルな部屋だけど
薄暗い照明のせいで
寂しい部屋だなと思った
そして不安が押し寄せる。
ここどこなの。
横にいるのは……
「……誰……?」
思ったより声が出なかった
冷静を保ったつもりだったけど
少し震えてて
尋ねてみたものの
横に視線を向けられなかった
モゾモゾとベットの中の誰かが動き
掛け布団をまくる気配がする
「……はよ」
「……っ!……」
たった二文字でも誰だか分かった
ゆっくり首をひねっていくと
薄暗い中で目が合う
……なんでっ!?
「……覚えてる?
昨日のお前、まじ激しかったよ」
カオルが半身を起こし
口角を上げて笑っていた。