ご主人様は突然に
第3章 お持ち帰りですか?
いや……だっ!!
胸元をドンッと強めに押すと
意外と簡単にくちびるは離れた
「なんでっ……、キスするわけ?!」
くちびるを拭いながら睨みつけると
カオルはフッと笑う
「介抱してやった……お駄賃?」
「あんたに頼んでないっ!!」
「赤坂に頼まれたんだよ。
酒乱のお前は扱いが難しいからな」
「……!……でもキスはおかしい!
もっと別のことにしてよっ!」
「別?……例えば?」
「そんなの分かんない!
あんたが別の考えたらいいでしょ。
てか、もう離してよっ!帰るからっ」
掴まれたままだった片方の腕を
ブンブンと振りほどこうとすると
「まだ……帰るなよ」
カオルが切なそうに眉を寄せる
なにその顔。
なんとなく嫌な予感がして
逃げなきゃ、と本能的に感じた
カオルが変な顔してようが
私の知ったことじゃない。
話に意識を逸らせながら
一気に腕を振りほどこうと決めて
カオルに向き直る
「な、なに言ってんの?
あんたさっきから変だよ。
あんたの方がどうかあるんじゃない?
私はもう介抱は―――」
大丈夫だから、と言い終える前に
「きゃっ!?」
ドサッとベットへ倒されていた
驚いてカオルに目を向けると
熱い眼差しで見つめられて戸惑った
この眼は―――
「ちょっと、カオル……
からかうのやめてよ、冗談キツいよ!」
精一杯、強気な態度を見せる
「ねっ、違う話しようよ!?
ほらカオルの店のこととか……」
気を逸らそうとしてるのなんか
お見通しというように
カオルは音を立てずに微笑んだ
「やっと呼んだな」
意味の分からないことをつぶやいて
カオルは顔を近づけてきた
手首は動かない
「待ってカオルッ!だめだって!
私カズしかっ………んっ……」
首をペロッと舐められて
身体がピクッと反応した
やだ。怖い。
恐怖感とは裏腹に
身体は与えられる快感に素直で
自分がうらめしい
身体を触られるのなんて
いつぶりだろう
「や……やめてっ……
……あっ……やだぁ………」
抵抗するのは言葉だけになった私
カオルは鎖骨の上辺りに強く吸いついた。