ご主人様は突然に
第4章 佐藤の憂鬱
「頼むから出てくれよぉ……」
佐藤は携帯を握りしめて
画面を見つめながらなげいている。
あれからどれくらい経っただろう
結局カオルの連絡先は教えた
マナカの現状をバラしてしまった
罪悪感を薄めるためでもある
だけどカオルは電話に出なくて
いくら待てども折り返しもない
「きっとカオルも寝たんだよ」
そう言ってみても佐藤は納得せず
分かりやすく荒れていた
「落合のバカやろぉ……」
酒を飲むわ飲むわで酩酊状態
そりゃ好きな相手が
男の部屋に連れ込まれたって知れば
そうなるのは当然だと思う
「いわ……くまさぁん……」
はぁ……
私が撒いてしまった種のため
帰るに帰れない状況になっていた
コソッと携帯で時間を見てみれば
午前5:00を回っている
眠い……
「……大丈夫だって!
マナカに限ってありえないよ。
カオルのこと毛嫌いしてるし」
「……毛嫌い?」
話を聞いてなかった佐藤が
やっと反応して顔を上げる
「うん。佐藤は三年から同クラだったから
知らないだろうけど
カオルのこと毛嫌いしてるからマナカ」
「え……知らなかった……」
「詳しいことまでは
どうしても教えてくんないけど、
カオルによほどのことをされたんじゃ
ないかなと思ってて」
「よほどのこと……?」
「うん。それでもマナカは
カズの幼なじみであるカオルを
¨嫌でも関わらないといけないヤツ¨
って認識でそれなりに接してたかな」
こんなこと
マナカの許可なく話すのは
良くないと分かってるけど……
「まぁカオルはいい加減なとこあるけど
マナカを傷つけるようなクズでは
ないと思ってるよ……」
佐藤を安心させるためには
話すしかないと思った
「そうそーう。ナナコの言うとーり。
たまにはカオルを信じてあげよー。
てか……誰か携帯震えてない?」
半分寝かけていたアヤが
ソファーに横になったまま
自分の携帯を確認していた
つられて携帯に目をやると
いつの間にか震えていてドキッとした
バイブの微かな音が室内にこだまする
画面を確認すると
マナカからの着信だった。