ご主人様は突然に
第4章 佐藤の憂鬱
迎えに行ったらすぐ
赤坂や内野が待つ
駅前のカラオケに戻るつもりだった。
でもセブンを飛び出してすぐ
岩熊さんの首にある¨痕¨を見つけて
それをつけたであろう落合に
怒りや嫉妬が湧いて
今だけでも二人きりになりたかった
落合となにがあったのかも確めたくて
岩熊さんの手を引いて
近くの公園へ向かうと
予想どおり人なんていなかった
「着いたよ」
わずかに弾む息を吐きながら振り返ると
岩熊さんははぁ、はぁ、と
荒く息を吐いていて
苦しそうに歪んだ顔が
ベット上での表情を連想させ
危うく下半身が元気になるところだった
あぶねー……
「……大丈夫?ごめんね、急に走って」
「ううん。私が運動不足で体力ないだけ。
佐藤くんは全然平気そうだね」
「うん。陸上してたから
これくらいは平気かな。
とりあえず、そこのベンチ座ろ?」
「あ、うん」
なぜ公園に連れてこられたのか
岩熊さんはそこまで気にしてないのか
俺の言うままにベンチに座る
鳥勝で隣に座った時も感じたが
岩熊さんからはいい香りがして
俺は途端にドキドキし始めた
でも―――
微かに違う香りが混ざっていて
落合の香りが移ったのだと気づく
……香りが移るほどの
¨なにか¨をしたのか?
どこから尋ねるべきか考えながら
黙ってる俺に岩熊さんが顔を向ける
「ナナコたちといっしょにいたんだね」
「うん。……岩熊さんが心配で」
「そっか……
迎えに来てくれてありがとう」
そう言ってぎこちなく笑う岩熊さんは
どこか気まずそうで
「落合と……なにがあったの?」
口が勝手に声を漏らしていた。
岩熊さんは途端にうつむき
視線を泳がせる
「あ……ごめん。
話したくないなら……」
慌てて謝ると岩熊さんは首を振り
ふぅ、とため息を吐いて俺を見る。
「ううん。大丈夫……。
あの……先にひとつ、聞いていい?」
……聞いていい?
俺になにを聞きたいんだろ。
「……な、に……?」
「あのね……」
不安げな表情をする
岩熊さんから目が離せなかった。