ご主人様は突然に
第4章 佐藤の憂鬱
「私……、アイツにお持ち帰りされた
ってみんなに思われてるかな……?」
「へっ?!」
予想外の言葉に声がうわずってしまった。
思われてるかな?ってことは……
なにもなかったってことか?
岩熊さんは眉を下げて
弱々しく苦笑いしている
「ほら……泥酔状態だったでしょ私。
恥ずかしい話だけど、ああなると
記憶がまったくなくて……」
「あ……記憶、ないんだ?」
じゃ俺のほっぺにチューしたのも
覚えてないってことだよな。
「うん。起きたら……アイツが、
¨あの場にいたヤツみんな
私がお持ち帰りされたと思ってる¨
みたいなこと言ってて……」
「じゃ……落合とは
なにもなかったってこと?」
「もちろんっ!
……と言いたいけど、なんかアイツ
起きたら様子がおかしくて
その……少しだけ、触られて……」
少しだけ触られた結果が¨それ¨か。
首もとの赤黒い痕を見つめていると
岩熊さんが反射的に手で隠す
「これはっ……その……」
「……触られたのはそこだけ?」
岩熊さんは首をゆっくり横に振る
「……キスも……されて……」
「えっ……」
キス、された?
くちびるにってことだよな……
まじかよ
なにしてくれてんだよ落合……
いやでも
最後までいってないだけマシか?
いやいやいや、キスもだめだろっ!
「いやっでもね、キスって言っても
軽く触れるだけのものっていうか……
あんなのキスにカウントされないんじゃ
ないかなって。
それにアイツ私のこと嫌いみたいだし
絶対私に対する嫌がらせなんだと思う!」
うろたえる俺に
岩熊さんは必死に誤解を解こうとするが
解釈の仕方がおかしくて
「えっ!それはちょっと違う気が……」
「ううん。違わないよ。
アイツも¨介抱してやったお駄賃¨
って言ってたし……
私を困らせて楽しんでるだけなんだよ。
ホンット、性格悪すぎ!!」
えぇーーー………
違うよ、岩熊さん。
困らせる方法なんていくらでもあるし
そもそも嫌いな子に
嫌がらせでもキスなんかしないよ……
かなり鈍感なんだね……
それでも可愛いと思ってしまう俺は
ある意味、重症だ。