ご主人様は突然に
第4章 佐藤の憂鬱
今がチャンスってのは
俺も思ったことだけど
落合に言われると
すげー悪いことにしか聞こえない。
「……協力って具体的に
なにをすればいいわけ?」
「俺は雇い主として遠回しにでも
生活費の援助をするつもりだ。
……だからお前も好きにすればいい」
「好きにすればって……」
「それくらい自分で考えろ。
このチャンス逃したら
後悔するんじゃねぇか?
自分なりの方法で
アイツを振り向かせてみろよ」
「あー……」
「その代わり、下半身のブツを
突っ込んだら終わりだからな」
「分かっとるわ!!」
……とは言ってみたものの
岩熊さんを振り向かせることなんて
俺にできるだろうか。
正直、自信ねぇ……。
ガクッと頭を垂れる俺を見て
落合がフッと鼻で笑うのが聞こえた
「先に言っておくけど
期限は二人が離婚するまでな」
離婚するまで、か。
二人がいつ離婚するかも
分からないし、もしかしたら
離婚しないこともありえる
なんとも言えないけど……
できるだけのことはしてみよう
「……分かった。
振り向かせてみせる」
「おー、やる気出たな。
離婚するまでは俺は我慢しとく。
でも離婚が成立したら
遠慮なく動くから、よろしく」
よろしくって……
軽い言葉だけど
確実にライバル宣言されて
俺は冷や汗をかいていた
「てか、二人が離婚するまでは
我慢しとくってなんで?
俺と同時進行じゃだめなわけ?」
「あー、だってハンデやらねぇと
俺の圧勝になるだろ」
「なっ……!」
いけしゃあしゃあと言いきる姿に
かなりイラッとした
圧勝って……バカにしやがって!
「それにフェアじゃねぇからな」
「フェア?」
また意味不明なことを……
「アイツの身体のことは
隅々まで知ってっから、俺」
「……は?」
なんだその衝撃発言ッ!!
ま、まさか……
「おい、それどういう……?」
「……ナイショ。
お前がマナカを振り向かせられたら
教えてやるよ」
うえぇぇえ?!
そこまで言っといてぇぇぇ?!!
目を見開く俺を見て
落合が意地悪そうに笑う
身体から力が抜けていくのを
しみじみと感じていた。