ご主人様は突然に
第4章 佐藤の憂鬱
「ま、そういうことで。
じゃーアイツ送ってくから」
「えっ!俺が……」
送ってこうと思ってたんだけど。
そう言おうとすると
「実家に送るから。
お前、実家まで行く勇気あんの?」
「じ、実家……」
俺の心を見透かしたような
落合の言葉に息をのんだ
送って行きたいけど……
こんな時間での実家への送りは
なかなかハードルが高くて
ためらう気持ちが勝ってしまう
いや、待てよ……
これって岩熊さんのご家族と
顔見知りになれるチャンス?!
いや、でもなぁ……
「佐藤。そこは男なら即答しろよ」
「だってさ……」
ウダウダしてる俺に
落合がため息を吐いた
「だってじゃねぇよ。
判断力って大事だと思うぜ。
……おい、モナカ!帰るぞ」
落合が岩熊さんへ近づいていく
会話までは聞こえないけど
落合が伸ばした手を
岩熊さんが振り払うのが見えて
¨マナカは
カオルのこと毛嫌いしてるから¨
赤坂が教えてくれたことは
本当だったんだな……
少しホッとしながら
岩熊さんを見つめていると
俺の視線に気づいた岩熊さんが
気まずそうな顔で近づいてきた
「あの、佐藤くん……」
「な……に?」
「さっきはその、私……」
瞬間的に¨謝られる¨と感じて
俺は続きを待たずに口を挟む
『待って。
謝るべきなのは俺の方だから。
……岩熊さんの気持ちも考えず
あんなことして本当にごめん!!』
精一杯の謝罪を込めて頭を下げた
そっと顔を上げてみると
岩熊さんはどう反応すればいいのか
分からないという様子だった。
『……怒ってる?』
恐る恐る尋ねると
困った顔をしながらも
首を横に振ってくれて
なにも言ってはくれなかったけど
俺にはそれで十分だ。