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ご主人様は突然に

第5章 まさかの許嫁!?




「……え?なに?え?」



疑問で頭がいっぱいな私をよそに

しっかりと靴紐を結び終えた父が

玄関のドアを開けて振り返る。



「じゃ行ってくるわ。
ゆっくりしてけよ、カオル」


「不審者に間違われないように
気をつけて」



カオルが、冗談なのかそうではないのか

判断しにくいことを言うと



「今んとこ不審者はねぇな!
でも任せとけ!じゃな!」



父はにかっと笑って出かけて行った。



いやいや、

任せとけって意味分かんないし。



脳内ツッコミを入れてると

母のため息が耳に届いた



「ホント、アホだわ……」


「あのアホさ加減がトムさんの
長所でもあるんですけどね」



母の言葉に頷きながら

カオルが自然と靴を脱いでいた



「とりあえず、ご飯にしましょうよ。
なにか手伝うことあります?」


「……そうね。じゃ手伝って。
マナカも食べるでしょ?」


「あ、うん。……着替えてくる」



カオルと母の会話に

ツッコむタイミングを逃した私は

ひとまず二階に向かうことにした。



どんな理由にしても

心が乱れてる時は

センの顔が見たくなる



「センはアトの部屋よー」


「あー……うん」



そんな心境は

母にはお見通しなのかも。



そう思いながら階段を上り

なにげなく母の方に目をやると

カオルと目が合った。



え。なに。



眉をひそめると

カオルは私から目を逸らして

リビングに入っていった



なにアイツ。変なの。



首をかしげながら

弟のアトの部屋へ向かう



ドアを軽くノックすると

そっとドアが開いた



「お帰り。朝帰り?」



アトは父とよく似ていて

なんの迷いもなく尋ねてくるあたり

やっぱ親子だな、と思う。



「ただいま。
……セン、いい子にしてた?」



無視して尋ねると

アトは表情を緩ませた



「うん、いい子だったよ。
兄ちゃんと風呂入って嬉しそうでさ
今日は俺と入るんだって。
しばらく泊まってくんでしょ?」


「うーん……」



曖昧に返事をすると

私と入れ替わりにアトは部屋から出た。


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