ご主人様は突然に
第5章 まさかの許嫁!?
「ご……、ごめ……」
「別にいいよ。
セン、ほら大丈夫だから」
「えっ……?」
絶対、嫌みったらしく
なにか言われると思ったのに
カオルはセンを安心させるように
手を振ってみせていた。
「ママのこと、おこってない?」
その手を見つめながら
私の心配をするセンの頬を
カオルが優しく撫でる。
「怒ってないよ。
……でもまた悪いことをしないように
俺がシツケてやろうと思うんだ。
センはどう思う?」
「はあ?」
また突拍子のないことを。
しかもセンに聞くって、どゆこと?
カオルは私を無視して
穏やかな表情でセンを見つめている。
いやいや、発した言葉と表情が
合ってないから!!
「……ぼく、よくわかんない」
しばらく考えたあと
やっぱり理解できなかったのか
首をかしげるセンが超可愛い。
こんな状況じゃなけりゃ
ソッコーで抱きしめるのに!
チクショー、カオルめ……!
抱きしめチャンスを奪われた恨み、
忘れないからな!!
「……まだ分かんないよな。
徐々に分かってけばいいんだよ」
「うん!!」
なんか、いいこと風に言ってるけど
たぶん違うよね。
「……ミカコさん」
「ん?」
何事もなく食事を続けていた母と
おまけにアトも箸を止めた。
「俺、マナカのこと幼なじみとして
助けてやりたいと思ってて……」
「助け?」
「はい。俺のもとで働いてもらって
お給料を渡そうかと考えてます」
「……」
「¨俺のもと¨ってどういう意味?」
黙って考え込んだ母の代わりに
ずっと黙ってたアトが声を出した。
「俺、家事はできるんだけど
最近忙しくて食生活は乱れてるし
掃除もできなくて困ってて」
「ああ、焼き鳥の……鶏匠だよね。
近々、二店舗がオープンするんでしょ」
「そう。その一店舗のほうの店長を
任されることになって
余計に忙しくなりそうなんだ」
「その店舗で、働かせるってこと?」
「いや、酒も扱うから
トラブルとかあると面倒だと思うし
俺の家のことを頼みたくて」
「家?」
首をかしげるアトに向かって
カオルはゆっくり頷いた。