ご主人様は突然に
第6章 家事手伝い、スタート
「ずいぶん聞き分けいいね?」
アヤも同じことを考えてたようで
ドリンクを注ぎながら
意外そうに首をかしげている。
「うん、不気味なくらいね。
あぁ……やだなぁ」
「家事手伝いとか言って
すごいコキ使われそうやね」
「やっぱそう思う?!」
「うん、カオルだしねー。
まぁそれも生活のためよ。頑張れ!」
「超、他人事じゃん」
「バレた?フフフフ……」
「笑い事じゃないって~!」
にやつくアヤを追って席に戻ると
いつの間にか料理が届いていた。
「遅いよ二人とも。早く食べよー」
ナナコはよほどお腹をすかせてたのか
スプーンを握りしめて準備万端だ。
「ごめんごめん。
カオルに遭遇してさ」
「カオル?………いないけど」
店内を見渡すナナコに
アヤが入口のほうを指差す。
「マナカを迎えに来たらしー。
駐車場で待ってるって」
……待たなくていいのにね。
むしろ帰ってしまえっ。
「えっホントにいるわけ?
あとで一言、言ってやる!」
ナナコの言葉に頷いてると
アヤが苦笑いしながら
スプーンを渡してくれた。
「ケンカはせんでよ、ナナコ。
とりあえず腹を満たそ。
昼休みが終わってしまう」
「あっホント。食べよ食べよ」
「「「 いただきまーす 」」」
ナナコと私はオムライス
アヤは豚カツ定食を注文。
「あ~うんまい!」
「うん。カツもなかなか」
ナナコもアヤも
昼休みという貴重な時間を割いて
ここにいてくれている。
ありがたいけど
私は仕事してないし
時間に融通の利く身としては
申し訳なさが勝ってしまう。
「……二人とも、
忙しいのにごめんね」
「なにを今さら。
そこはありがとうでしょうよ」
「えっ……」
「そうそう。アヤの言うとおり。
マナカのためでもあるけど……
今日はファミレスの気分だったし?」
「うん。ファミレスも
たまにはいいよね~」
アヤもナナコも
気持ちいいほどにかっと笑ってて
私は安堵のため息を吐いた。
「……ありがと!」
あまり時間はなくても
二人に会うと元気が出る不思議。
カオルに姑のようにいびられても
今日なら大丈夫な気がする。