ご主人様は突然に
第6章 家事手伝い、スタート
会計を済ませて店を出ると
カオルは車から出て
携帯灰皿を手にタバコを吸っていた。
そんなカオルをいち早く見つけた
ナナコが勢いよく向かっていく。
「カオルッ!!」
「なに赤坂」
「なにじゃないわよ!
マナカになにしてるわけ?」
カオルはチラッと私を見て
ナナコに視線を戻す。
それは責めるものではなく
私が近くにいるのを確認したような
そんな視線に感じた。
「……聞いたのか」
興奮ぎみに詰め寄るナナコとは
正反対でカオルは冷静で
タバコを灰皿に押しつけた。
「聞いたのか、じゃないし。
……バンソウコウをつけなくちゃ
いけないことはルール違反でしょ!」
「アイツが人妻だから?」
「そうよ、基本でしょ。
てかアンタ、モテるんだから
フリーな子を捕まえたらいいじゃん」
「そういうのはもう飽きた。
どいつもこいつも
俺の外見にしか興味がねぇからな」
「うわ、今さりげなく自賛した?」
「嘘つくよりマシだろ。
それに追いかけられるのはもういい」
「アンタの恋愛観に興味ないけどね。
……とにかくマナカは人妻なんだから
¨そういうの¨は控えなさいよ?」
「フッ、そういうのねぇ……」
カオルは鼻で笑って携帯を見る
「てか、時間いいのか?」
「は?時間?……あっ!!」
ナナコの声を聞きながら
時間を確認すると――午後12:51
ナナコもアヤも会社に戻る時間だ。
「やばっ!もう戻らなきゃ――」
「会社まで送ってやるよ」
「は?」
「さっさと乗れ。
内野も送るから乗れよ」
カオルがナナコを車に押し込んで
アヤへ顔を向ける。
「まじでいいの?」
「ああ。時間ないんだろ」
「うん。カオルが優しいなんて
気持ち悪いけど、お言葉に甘えるわ」
「うるせぇよ」
「フフッ。おじゃま~」
後部座席に乗り込むアヤに続いて
乗り込もうとする私の腕を
カオルがグイッと引く。
「お前は助手席」
「えー?」
強制的に助手席に押し込まれて
大人しくシートベルトを装着すると
カオルも乗り込み、車が発進された。
「どっちを先に降ろす?」
カオルが普通の人みたいで
なんか変な感じ。